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初恋 4

Auteur: 煉彩
last update Date de publication: 2026-01-07 20:03:53

 彼から連絡先を聞かれるなんて思ってもみなかった。

「はい!私で良かったら」

 あまりの緊張で声が大きくなってしまう。

 震える手でスマホを取り出し、画面を開く。

 普段はアプリを開き、QRコードを読み取るといった簡単な作業なのに、あまりの緊張で操作方法がわからなくなる。

 頭の中は真っ白だ。

 そんな私に彼は優しく

「俺が読み取っていいですか?」

 声をかけてくれる。

「はい」

 私は自分の画面を黒崎さんに見せる。

「今、美桜ちゃんにメッセージを送りました。見てください」

 黒崎さんは私にメッセージを送ってくれたらしい。

 アプリを開くと、黒崎という名前が表示された。

 メッセージ画面を開く。

<これからよろしくお願いします>

 これからよろしくって、義理かもしれないのに、嬉し過ぎて涙が出そう。

 ずっと好きだった推しに会えたって感動に近いのかな。

 ドクンドクンと大きな鼓動が止まらない。

 黒崎さんが送ってくれた言葉に期待を抱いちゃう。

「仕事で返信が遅くなるかもしれませんが、何かあったら連絡してください」

 黒崎さんはそう私に伝え、去って行った。

 彼がこの場にいなくなったあとも、しばらく動けなかった。

 これって夢じゃないよね?

 何度も思っちゃう。心臓のドキドキが治らない。

 大学で、優菜に彼と会えたこと、お礼を伝えたこと、彼から連絡先を交換しようと言われたこと、全て話をした。名前が黒崎さんっていうことも。

「えっ、そんなことある!?良かったじゃん!!」

 優菜も驚きを隠せないようで、良かったねと何度も繰り返し、ハグしてくれた。

「夢じゃないかと思ってる」

 まだ信じられない。

「夢じゃないよ」

 優菜は私の顔を思いっきり引っ張った。

 お約束の方法に

「痛いよ!」

 苦痛に顔を歪ませる。

 痛いから、夢じゃない。優奈ともちゃんと会話ができてる。

「いいなぁ。で、美桜は返事を送ったの?」

 そうだ。

 連絡先を交換できたことに満足しちゃって、私、何も送ってない。

「まだしてない。でも、なんて送ったらいいかな」

 黒崎さんから送られてきた一文を見て、悩む。

 メッセージを送る上でこんなに返事で悩んだことはない。

「普通に送ったらいいんじゃないの?今度ご飯に行きましょう?とか」

「ええっ!ご飯に誘うの!?いきなりそんなこと言えない」

 優菜のアドバイスは参考にならないよ。

 黒崎さんに近づきたいのに、積極的になれない。

 彼に嫌われるようなことはしたくない。

 面倒とか嫌われるくらいなら、友達でいい。

 まだ友達にもなれていないけど。

「美桜、奥手だもんね。まぁ、返事くらいしてみれば?」

 きっと家で返事を考えていたら、一人でずっと悩むことになる。

 優菜が近くにいてくれるうちに、返事を送ってみよう。

<今日は、連絡先を交換してくれてありがとうございました。嬉しかったです>

 そう彼に送ろう。嬉しかったのは事実だから。

 私は送信ボタンをタップする。

「ふぅ」と息を吐く。メッセージを送るだけでこんなに緊張するんだ。

 黒崎さんは返事をくれるかなぁ。

 大学の講義が終わり、アルバイト先へ向かう。

 私は、個人経営のカフェでアルバイトをしている。

 大学に入学をしてからすぐ雇ってもらうことができたので、働いて二年は過ぎた。

 特に苦手な従業員はいないし、個人経営の比較的小さな規模のカフェのため、そんなにスタッフもいない。

 コーヒーにこだわり、専門に取り扱っているため、コーヒー好きの常連客が多かった。

 お店の雰囲気もゆったりとしているため、長時間利用するお客様も多い。

 バイトが最近億劫に感じてしまうのは、苦手がお客さんがよく来るためだ。

 毎日来店するわけではないが、週に二回から三回程は顔を合わせる。

 五十代くらいの男性、仕事の帰りにいつも寄るためか、スーツ姿だ。注文時や近くを通りすぎる時、身体を軽く触ってくることがある。

 故意にやっているのか、たまたまなのかというくらいの触れ方で確信できないから、店長にも相談ができていない。

 常連客のため機嫌を損ねるような態度はとれないし、最近行動がエスカレートしてきているように感じていた。

「もしまたあのお客さんが来たら」

 考えると足取りが重くなってしまう。

「お疲れ様です」

 店長に挨拶をし、フロアに入る。

 私はキッチンスタッフではなく、フロア担当をしている。

 客席を見渡すと、苦手なお客さんの姿が見えた。

 気にしないように、新規のお客様のオーダーを聞きに行く。

 するとその後、苦手なお客さんに話しかけられた。

「東条ちゃん。最近、綺麗になったね」

 ニコニコ笑っているところが少し怖い。

「ありがとうございます」

 名前は制服のプレートに書いてあるため、覚えられても仕方がない。

 社交辞令のお礼を伝え、その場から通りすぎようとすると

「ちょっと!これあとで見ておいて」

 一枚のメモを渡された。

「かしこまりました」

 ポケットにしまいその場を去る。

 なんだろう?

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